2020年6月17日
「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート) 2020年5月29日
5月28日時点における販売の実態についてまとめられています。
その中で指摘されている製品の表示内容の問題を踏まえて、私たちが購入や使用を検討する際の注意点としてわかりやすくまとめました。
※現時点において、「次亜塩素酸水」の新型コロナウィルスへの有効性は確認されていません。
「次亜塩素酸水」等の化学的な特性が正しく表示されているか
「次亜塩素酸水」等の性質や取扱いについては、製造方法と原料が重要です。効果については、「有効塩素濃度(残留塩素濃度)」と「酸性度」が目安となっています。
製造方法と原料
液体を販売するには、製造方法(電気分解、混和等)や原料について以下の3点が明記されていなければなりません。
- 電気分解で作られた製品は、使われた電解質
- 化学物質の混和で作られた製品は、使われた化学物質(次亜塩素酸ナトリウムと混和物質)
- 上記以外の製造方法で作られた製品は、その生成過程と使われている原料
「次亜塩素酸水」ができると謳った液体(希釈して使う原液)、粉末、タブレット(錠剤タイプ)などの製品は、次亜塩素酸水ではありません。本当に効果があって安全かどうかの根拠をチェックし、成分と使用できる場所、希釈/溶解方法、使用上の注意、保管方法について説明されているかどうかをよく確認しましょう。
液性・濃度・成分
- 液性をpHで明記している
- 次亜塩素酸濃度を「mg/L」または「ppm」を単位として明記している
- 希釈して使用するものは、その希釈方法を明記している
- 液体の販売は、「製造日」「使用可能期間」「使用可能期間における次亜塩素酸濃度の低減について」を明記している
- 「次亜塩素酸水」を作れると謳った製品は、「生成器としての使用可能期間」(適切な液性・濃度の次亜塩素酸水が生成可能な期間)、「生成後の液体の使用期間」および「生成後の次亜塩素酸濃度の低減について」を明記している
- 次亜塩素酸以外のすべての成分を明記している(希塩酸やクエン酸などの添加物)
有効性や安全性の根拠が明示され誤解を生まない表示か
有効性と安全性の根拠となる適切な試験方法以外は無効
- 消毒・除菌などの有効性の根拠が明示されているか
- 安全性の根拠が表示されているか
- 根拠となる結果表示に、「試験方法」「試験実施時期」「用いた手法」「試験を行った機関」「結果」等が明示されているか
正当な「根拠」となる評価方法は、国際規格(ISO)、国家規格(JIS)、団体規格等で規定されたものに限ります。
いつ、どこで、誰が、どのような方法で評価試験を行い、どんな結果が得られたのかを正確に明記していない製品は信用できません。
公的に認められていない独自の評価試験や研究結果などは、すべて無効です。
いくら有効性や安全性を謳っていても、その根拠が明示されていなければアウト!
「食品添加物」等を根拠とした説明は無効
以下の説明はNGです。
- 製品が食品添加物なので人体に対して安全だ
- 食品添加物や医薬品である「次亜塩素酸水」と同等の液性・濃度であるから安全だ
- 原料が食品添加物だけの組み合わせなので安全だ
「食品添加物」というだけで、「安全」とは言い切れません。食品添加物として認められている成分(液性や濃度)であっても、使用方法が違えば安全性の保証はありません。「液体で洗浄」した場合は有効性と安全性が保証されていても、それを超音波加湿器で噴霧した場合の有効性/安全性は保障されていないのです。
似たような性質であっても、まったく同じものでない限りは、明らかに別物です。
使われている原料が、それぞれ個別に食品添加物であっても、それらを混ぜた場合の有効性と安全性は保証されていません。混ぜることによって化学変化が起きる可能性があるので、混ぜると個別の保証は通用しないのです。
このような言い訳を表示している製品は、信用できません。
有人空間で「次亜塩素酸水」を噴霧するウィルス対策が、公式に認められていると誤解させる表示は言語道断!
人が生活している空間に次亜塩素酸水を噴霧することは、一切認められていません。
人のいる空間で噴霧することは非常に危険であり、ウィルスを不活化する効果もないことが確認されています。
他社製品を誹謗中傷する広告を行っているものは最低!
自社製品の有効性や安全性の根拠がないうえに、他社製品にケチをつけたり比較して劣っているという内容の広告を出している製品は、まったく信用できません。
「医療用」の次亜塩素酸水は存在しない!
「医療用」を騙る製品がありますが、「医療用」の次亜塩素酸水は流通していません。「医療用」として認可されているのは、手洗い消毒用の電解水生成器と軟性内視鏡洗浄消毒器だけです。生成器が「医療機器」として認可されているだけで、その生成器で作られた次亜塩素酸水は「医療用」の認可はされていません。
もちろん、「厚生労働省が効果を認めた」という表現も、不適切です。厚生労働省が効果を認めたのは「食品添加物(殺菌料)」としての3つの強酸性電解水だけです。
使用上の注意を確認する
安全上の注意事項
- 製品に酸を混ぜた場合や保管中に有害な塩素ガスが発生する可能性があることが明記されているか「まぜるな危険!」
- 通気性のよい場所に保管するよう表示されているか
- 子どもの手の届かない場所に保管するよう表示されているか
- 次亜塩素酸ナトリウムと混同して使用すると危険であることが明記されているか
有効性を維持するための注意事項
- 有機物(汚れ)で分解されるため、先に汚れを落としておかなければいけないものについて、その旨明記されているか
- 紫外線によって分解されるため、遮光性の容器に入れるか暗所に保管すべきことを明記しているか
次亜塩素酸ナトリウム溶液は、多量の有機物汚れで殺菌効果が著しく低下するので、消毒の前にきれいに洗っておかなければなりません。(床などの吐物に対しては一部例外)
次亜塩素酸は紫外線を吸収して有効塩素が光分解されます。そのため有効性を維持するには遮光が必須です。また、高温で光分解が促進されることも知られています。
悪質な法令違反を判別するチェックポイント
消費者の誤解を招き、効果が保証されていない危険な製品や法令違反の悪質な製品は、絶対に購入しないよう注意が必要です。
- 既存の医薬品および医薬部外品と同じ名前を騙っている
- 医薬品または医薬部外品とまぎらわしい名前を使っている
- 薬機法の承認を得ていないにもかかわらず、手指や人体への効果を謳っている
- 特定の効果・効能を謳う名称を使っている
- 関連する法令に抵触する名前を使っている
- 特許に関する表示で「方法特許」または「製法特許」の文字や特許番号並びに特許発明にかかる事項を正確に表示していない
関連する法令
食品衛生法(昭和22年12月24日法律第233号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78330000&dataType=0&pageNo=1
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)*通称「薬機法」:2014年(H26年11月)旧薬事法から名称変更
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81004000&dataType=0&pageNo=1
不正競争防止法(平成5年5月19日法律第47) 文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu8/toushin/attach/1366565.htm
不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)*景品表示法 消費者庁
消費者安全法第5条
[]http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/17120090605050.htm
まとめ
このファクトシートでは「次亜塩素酸水」等とされています。次亜塩素酸水は食品添加物(殺菌料)として認められている3種類の強酸性電解水のみですが、その基準に当てはまらないものを「次亜塩素酸水」と名乗って販売されている製品が非常に多くなっています。
単に効果がないだけなら「お金と手間の無駄」で済みますが、「人体に有害」な場合があるので安易な使用は危険です。殺菌効果を信じて感染を拡大させてしまう可能性もあります。
以下の10項目について、厳しくチェックしましょう。
1.製造方法
電気分解して生成された酸性電解水以外は「次亜塩素酸水」という名前を使うことはできません。薄めたり溶かすものは次亜塩素酸水ではありません。
2.原料
①次亜塩素酸水(3種類)
- 強酸性次亜塩素酸水(電解水):塩化ナトリウム水溶液(塩水)
- 弱酸性次亜塩素酸水(電解水):塩化ナトリウム水溶液(塩水)
- 微酸性次亜塩素酸水(電解水):希釈塩酸
②混合水
- 次亜塩素酸ナトリウムと酸
③電解次亜水
- 塩化ナトリウム水溶液(塩水)
④次亜塩素酸ナトリウム溶液
- 次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)
3.電解水(次亜塩素酸水)以外の製品
以下の3種類の製法で作る液体は「次亜塩素酸水」ではありません。
このような製品に「次亜塩素酸水」と表示したり紛らわしい名前を使っている場合や、「厚生労働省が効果を認めた」とか「官公庁で多数採用」などと宣伝しているものは要注意です。
①混合水
次亜塩素酸ナトリウムと酸(希塩酸やクエン酸など)を混ぜた液体を混合水といいます。希釈して使います。混ぜると塩素ガスが発生するため素人が行うのは危険ですが、混合して使用するとこと自体は問題ありません。ただし、その混合水を販売することは禁じられています。
②粉
粉末を水などに溶かして液体を作ります。
③タブレット(錠剤タイプ)
粒状の固形物を水などに溶かして液体を作ります。
4.食品添加物としての有効塩素濃度・pH
<次亜塩素酸水>
主殺菌成分は「遊離次亜塩素酸」(HOCl)
- 強酸性電解水:有効塩素濃度20~60ppm pH2.7以下
- 弱酸性電解水:有効塩素濃度20~60ppm pH2.7~5
- 微酸性電解水:有効塩素濃度10~80ppm pH5~6.5 *唯一保存可能
<次亜塩素酸ナトリウム>
「遊離次亜塩素酸」が少ないため、高い塩素濃度が必要
有効塩素濃度50~200ppm pH8以上
※食品添加物ではなく消毒薬として次亜塩素酸ナトリウムを使う場合
- 金属表面:500ppm(0.05%)数分放置後に水拭き(錆びやすい)
- 木製表面:1000ppm(0.1%)
木は次亜塩素酸ナトリウムを不活性化する作用があるので濃い濃度で使用する
木の成分(パルプ)が多い紙製品等を使用する場合も同様
※浸漬消毒の場合
- 100ppm(0.01%)で1時間浸漬
- 200ppm(0.02%)で30分浸漬
5.製造日
製造日が明記されているかどうか、必ず確認しましょう。表示のない製品を購入してはいけません。
6.使用可能期間(消費期限)
製造日からどのくらいの期間使用可能であるか、明記されていることを確認しましょう。微酸性次亜塩素酸水は、生成後約1年間は保存して使うことができるといわれています。それ以外は、作り置きができません。液体を容器に入れて販売している製品のほとんどは、次亜塩素酸水ではないのです。
7.次亜塩素酸濃度の低減について
次亜塩素酸水は、時間の経過、紫外線、温度などの影響で有効な次亜塩素酸濃度が低下していきます。どのような条件で、どのくらい効果が減ってゆくかについて、きちんと説明されていない製品は、使わないようにしましょう。
強酸性次亜塩素酸水(電解水)と弱酸性次亜塩素酸水(電解水)は、生成直後のみ使用できます。生成器から流水の状態でしか使えません。(保存できません)
8.生成器本体の使用期間(耐用年数)と保守点検
規程された濃度とpHの次亜塩素酸水を生成する機械が、正しい生成機能を保証されている使用期間を確認しましょう。
食品添加物としての「次亜塩素酸水」生成器には、法的規格があります。構造や各部の材質が厳しく規程されており、使用に当たっては適切な保守管理が義務付けられています。
そのような取り扱いの説明とメンテナンスサービスが明記されているかも、しっかり確認しましょう。
9.保管方法
液体の保管に関して、「遮光容器」の指定や直射日光が当たらない「暗所」に保管することが明記されているかどうかを確認しましょう。また、何度以上の高温は避けるなど説明があれば更によいでしょう。
子どもの手の届かない場所に厳重に保管しましょう。
10.使用上の注意点
①「噴霧」は厳禁
人体に「噴霧」することの安全性が確認されていません。消毒薬を人のいる空間に噴霧することは禁じられています。直接スプレーする使い方に比べて、「噴霧」は殺菌・消毒効果が著しく低下するので、効果がないとされています。
また、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を、スプレーして使うことは禁止されています。
②人体に使ってはいけない
人体への使用は、手術時手洗い消毒の強酸性次亜塩素酸水(電解水)と、微酸性次亜塩素酸水(電解水)以外は認められていません。手指消毒薬の代わりに使用することはできないので、注意しましょう。
③加熱式加湿器で使用してはいけない
超音波加湿器で噴霧する使い方の製品がありますが、同じ加湿器でも加熱式の加湿器で使用することは絶対にしないでください。加熱によって化学変化や濃縮が起こり、非常に危険です。加湿器の故障の原因にもなります。
④消毒するものはあらかじめきれいに洗っておくこと
次亜塩素酸の消毒効果は汚染(有機物)によって激減します。消毒の目的で使用する際には、消毒する場所や物の汚れを取っておく必要があります。
⑤混ぜるな!危険!
酸と混ぜると塩素ガスが発生して、死に至る場合もあり非常に危険です。
酸性の洗剤や酢などと混ぜてはいけないことが明記されていなければなりません。