2020年6月2日
新型コロナウィルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会事務局
2020年5月29日現在の知見に基づいて作成された資料が公表されました。
この資料は、新しい情報が追加されるごとに随時更新されるものです。
公表されたファクトシートの内容を、わかりやすく説明いたします。
*おそれいりますが、リンクしていないURLは、検索窓にコピペしてご覧ください
【キーワード】次亜塩素酸水、噴霧、次亜塩素酸ナトリウム、加湿器
次亜塩素酸水の新型コロナウィルスへの有効性???
2020年5月29日の時点においては、次亜塩素酸水の新型コロナウィルスへの有効性は確認されていません。
北海道の2つの大学名で「有効」というプレスリリースを出しているところがあります。これらの研究は論文として査読が完了していず、まだ内容の評価(承認)が得られていません。空気中に噴霧した場合の有効性の確認方法自体がまだ国際的に確立されていないため、効果があるという結論には至らないのです。
「次亜塩素酸水」とウィルスを直接接触させた実験では、ウィルスの不活化を確認したという主張があります。仮に直接接触で新型コロナウィルスを不活化できたとしても、噴霧した場合はウィルスに作用する条件が違うので、空気中に噴霧した時にウィルスが不活化されたという証明にはなりません。
次亜塩素酸水の流水による手洗いや野菜などの洗浄による直接接触では、すでに効果は確認されているので、食品添加物(殺菌料)に認可されています。しかし、新型コロナウィルスにも効果があるかどうかは、まだ研究中です。
某大学の研究では、厚生労働省が定義する「次亜塩素酸水」とは違うものを次亜塩素酸水と称しています。それでは、次亜塩素酸水の効果とは言えませんね。
空気清浄機のウィルス除去性能評価試験の流用
日本電気工業会(JEMA)が、団体規格として空気清浄機のウィルスに対する除去性能評価試験方法を2つ策定しています。
これを利用して、空気清浄機の性能よりも次亜塩素酸水を噴霧した方がウィルスが速く減少すると主張する企業がありますが、ウィルスの不活化についての比較データが存在しません。
空間噴霧の安全性???
消毒液噴霧による人体への安全性について、確率された評価方法が存在していません。
確認する方法がないので、安全であると断言はできないのです。
人体への安全性評価
次亜塩素酸水を使った空気清浄機を製造販売している国内大手家電メーカーでは、「空気中の塩素濃度に関する労働安全衛生法の基準(0.5ppm)を根拠としているところがあります。
ところが、これは空気中の「塩素」(Cl2)濃度の基準です。
次亜塩素酸水を噴霧した時のミストに含まれる「遊離次亜塩素酸」(HCIO)そのものの影響を評価・分析した結果はどこにもありません。
動物実験による安全性評価
ラットやマウスなどによる動物実験のデータから安全性を謳うところがありますが、人が気道から吸引した場合の毒性を確認しなければなりません。
また、経口毒性(飲み込んだ時の消化器への影響や血液中に吸収された場合の影響など)だけを確認して安全と主張するところもありますが、吸入による気道や肺への影響は確認されていません。
人体への実際の影響
消費者からの事故情報データバンクには、「次亜塩素酸水の空間噴霧による健康被害」と思われる報告が届いています。
また、誤って「次亜塩素酸ナトリウム」を噴霧したことによる健康被害も確認されています。
次亜塩素酸ナトリウム溶液を、次亜塩素酸水と偽って販売しているメーカーが多数みられるので、もし加湿器や噴霧で使用していたならば非常に危険です。
独立行政法人 国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/jikojoho_db/
事故情報データバンクシステム
http://www.jikojoho.go.jp/ai_national/
上記のサイトの検索ワードランキングです。皆さんの関心の高さがうかがえますね。
(6月2日現在)
空間への噴霧について
消毒剤による噴霧消毒は無人空間で行い、十分に換気してから入室する方法では、従来から行われています。
ところが、有人空間での日常的な噴霧をすすめる製品が多いので、鵜呑みにしないよう注意が必要です。
「除菌」「殺菌」「消毒」を謳うメーカーでは、噴霧によって環境表面/物体表面のウィルスを不活化するのか、空中のウィルスを不活化するのか、目的が不明なものが多くみられます。
物品への影響
次亜塩素酸によって、金属が腐食する可能性があります。
金属以外にもゴム製品の劣化についても、多数報告があります。
「噴霧」に関する各国の見解
世界保健機構(WHO)の見解
- 「COVIV-19について、噴霧や燻蒸による環境表面への消毒目的の日常的な使用は推奨されない
- 消毒剤を人体に噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されない。これは、肉体的にも精神的にも有害である可能性があり、感染者の飛沫や接触によるウィルス感染力を低下させることにはならない。
※仮訳
米国疾病予防管理センター(CDC)の見解
- 消毒剤噴霧は、空気や表面の除染のためには不十分な方法である
- 一般的衛生管理には推奨されない
※仮訳・抜粋
中国国家衛生健康委員会の見解
- 人がいる状態で空間・空気に対して消毒を行うべきではない
中国国家衛生健康委員会「消毒剤使用指南」(2020年2月18日)
※仮訳・抜粋
厚生労働省からの注意
- 社会福祉施設等において、次亜塩素酸ナトリウム液の噴霧については、吸引すると有害であり、効果が不確実であることから行わないこと。
(次亜塩素酸ナトリウムによる環境消毒は、清拭を行う)
*次亜塩素酸水については言及していない
事務連絡「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について」
令和2(2020)年3月6日 厚生労働省
次亜塩素酸水噴霧の実態調査
- 加湿器等に次亜塩素酸水を入れて噴霧すると「空間除菌」ができると謳う販売が多い
- 確認できた81品目をチェック
- 少なくとも66品目が「空間除菌」を謳って販売している
- 医療機関、保育施設、福祉施設等で以前から使用されているところがある
- 新型コロナウィルス対策として新たに導入する飲食店が増えている
問題点と課題
- 「次亜塩素酸水」ではないものを次亜塩素酸水と称して販売している
- 空間噴霧によるウィルス不活化効果が検証されていない
- 有人空間での噴霧による安全性が確認されていない
- 空間噴霧の使用目的が明示されていない(物体表面のウィルスの不活化/空中のウィルスの不活化)
- 「除菌」「殺菌」という表現はウィルスに当てはまらない(ウィルスは細菌ではない)
新型コロナウィルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会事務局