中材業務【洗浄と滅菌】安全な再生処理と感染制御

歯科医療も含めて、診療に使用した医療器具を安全に再使用するための再生処理と感染制御についてわかりやすく解説しています。

【中材の評価ツール】滅菌管理業務検討委員会|日本医療機器学会2019

日本医療機器学会誌でのアナウンスでは、委員会の活動目的は4つ掲げられています。

先日の第50回北海道中材業務研究会で、深柄和彦先生のご講演に6つの内容が詳しく紹介されました。

  1. 中材業務の見える化を目的とした各施設の業務レベル評価ツールの開発
  2. 評価ツールに基づく学会による施設認定(診療報酬につなげたい)
  3. 全国の中材スタッフに重要な新規情報を迅速に伝えるシステムの構築
  4. 日本医療機器学会が単位取得を認定している全国の中材関連研究会との連携強化
  5. 全国の中材スタッフの教育ツールの開発
  6. 医療材料・器械の添付文書適正化を図るため、不適切な添付文書情報の収集とPMDAへの報告

中材の評価ツール

 中材を適切に評価するツールを作ります。

評価結果をもとに、不足部分を補い業務改善を進める指標になります。

どんな評価項目があるのかを知って、できている部分を強化し、不足な部分については経営者を説得する材料にも活用できるでしょう。

現状では、どんなに頑張っても限界がある業務体制について、具体的な改善目標を「勧告」として公開しようとするものです。

評価項目の策定方法

  1. 各項目を委員が分担する
  2. リストを作成し委員会でレビュー(検討)
  3. 試用版作成とモニター施設での使用
  4. 評価結果の妥当性を検証
  5. 試用版の改訂
  6. パブリックコメント
  7. さらなる改訂

そして、日本医療機器学会の認定を受けます。

学会が優良施設を認定し、将来的には診療報酬に反映されることが目標です。

  • 医療施設が社会的な信頼を得る
  • 医療収入の増加につながる
  • 医療施設の規模にかかわらず再生処理のレベルを向上させる

認定を受けることで、このようなメリットを手にすることができるようになることを期待しています。

正しい知識の普及

日本各地で、中材研究会が活発な活動を行っています。勉強されている内容に、地域格差があったり、発言者によって考え方に若干の違いがあるようです。

評価基準が整備されると、どの考えに従えばよいかという現場のスタッフや管理者の悩みが解消されるのではないでしょうか。

昨年度で日本の病院は8,439施設あるそうです。医科のクリニックは102,105、歯科クリニックは68,613。施設の規模に関係なく、一定水準の再生処理が浸透するよう願っています。

 H30(2018)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況|厚生労働省

学会や研究会での勉強を行わず滅菌技師/士も勤務していない大多数の医療施設への効果的なアプローチになると思います。

情報伝達システム

 学会誌では滅菌技師/士間の情報共有という文言でしたが、中材で働くスタッフ全体に対象が広げられています。

適切なテキストが少なく、どこに、誰に相談すればいいのか、日々悩んでいる方は多いと思います。

ここなら、いつでも最新情報が更新されているというサイトがあれば、便利ですね。

 私の主な情報源は、学会・研究会・セミナーと書籍、インターネット検索です。

その中で、利用頻度の高いサイトを2つご紹介します。

www.yoshida-pharm.com 小林寛伊先生がご指導されたサイトです

吉田製薬のホームページからは、リンクしていないようです。

med.saraya.com

サラヤ株式会社のホームページ「医療従事者の方へ」からリンクしています。

中材関連研究会の連携強化

 日本の中材研究会が、ひとつにまとまれば最強ですね。

しかし、サイトやホームページを持たない研究会も多いと思います。

そんな中での横のつながりを、どのように運営してゆくのか。中材研全国会議とか連絡協議会のような組織が必要になってくるのでしょう。医療機器学会大会に位置付けるのが、現実的でしょうか。

北海道中材業務研究会はサイトがなく、北海道大学病院の物流管理センターの師長さんが数年交替で会長を務めています。

様々な運営形態がある中での「連携」の在り方、どのような工夫がなされるのか楽しみです。

教育ツールの開発

 中材業務に関する教育に関しては、悩んでいる施設が多いのではないでしょうか。

教育方法としては、「モノ」「場所」「時間」に応じて次のようなものがあります。

  • 書籍・テキストによる座学や自己学習
  • ワークショップや実技研修
  • 学会・研究会・セミナーへの参加
  • 日常業務の中でのタイムリーな指導
  • 事例に基づいた職場での勉強会
  • 業務手順の定期的な見直し(1回/年)
  • e-ラーニング

 各地の中材研究会ごとに、独自の研修や基礎講座を運営しているところがあります。

しかし、すべての都道府県に中材研究会が存在するわけではなく、このブログを通じて知り合った愛媛県のナースは、広島の中材研まで出かけているそうです。

北海道にも複数の中材研がありますが、地域が広大で地方からの参加は時間とお金がかかります。

滅菌技師/士のライセンスは、決められた期間内に指定の単位数を取得しなければ更新することはできません。常に最新の情報に触れて知識と技術を磨かなければ、資格の有効期限が切れてしまいます。

資格を持っている方々にも学習の機会は必要ですし、資格のない方々にも学習方法を選んで勉強できる環境が必要です。

特に、医学的な知識のない方々の基礎教育を、早く充実させて欲しいと願っています。

販売されている書籍には、様々なものがあります。最新の情報を網羅したものは非常に少なく、怖ろしい内容が記載されている歯科の出版物の多さには驚きました。

私がこのサイトを始めたきっかけが、歯科の悪書です。もちろん、愛読書にしている良書も存在します。同じ出版社から、両極端の書籍が販売されていることにも驚きました。内容の是非を問う知識のない編集者が、出版をアシストしているのでしょうか。

サイトなら、必要な時にいつでも検索やアクセスができます。情報の更新も、それなりに対応してゆけるでしょう。(運営者の努力に依存しますが)

ただし、私のような個人のサイト運営には限界があります。できれば、医療機器や洗剤などの各メーカーが、それぞれの専門分野において、もっと適切で現場に即した詳しい情報を公開して欲しいと思います。そうすることで、メーカーの知名度が上がり、製品の信頼性も向上、販売業績アップにもつながるのではないでしょうか。

  • サイトURLのSSL化
  • 読みやすいフォント(字体と大きさ)
  • サイトマップとサイト内検索機能
  • ホームページで情報の入り口(リンク)がわかりやすいこと

最低限、上記の4項目については再考願いたいところです。

www.3mcompany.jp 会員登録してログインします

添付文書の適正化

 医科に比べると歯科領域の添付文書は、悲惨と言っても過言ではありません。「滅菌」や「洗浄」の知識を持たない企業が多いと痛感しています。

厚生労働省は「メーカーの添付文書に従え」と強調していますが、無知で無責任な添付文書に従って医療事故が起きた場合、責任を問われるのは実施者個人です。

もし私が注射薬の量を間違えて患者さんを死なせてしまったとしたら。原因は医師の指示間違いなのに、医師は罪に問われず私が殺人罪で起訴されるのです。

看護師と言う国家資格を有する者なら、医師のミスに気付くのが当然であり、ミスを是正する措置を怠ったために患者を死に至らしめた、という判断です。

添付文書のいい加減さを看破する知識がなければ、医療器具を安全使用することはできないでしょう。

PMDA

http://www.pmda.go.jp/  *保護されていない通信です(コピペしてください)

PMDAは「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構」です。医薬品だけでなく医療機器に関しても活動を行っています。

PMDAの安全対策業務フロー図

安全対策業務:PMDA

出典:「安全対策業務の概要」PMDA http://www.pmda.go.jp/safety/outline/0001.html

 まとめ

2019年6月に発足した委員会ですが、まだ半年も経たないうちにここれだけ活発な意見交換が行われ、具体的で濃い内容に進化していることを知って、感動しました。

委員の方々の熱意と行動力に圧倒されます。

洗浄・消毒・滅菌に関する正しい情報を周知し、日本の医療全体のレベルアップを図ろうとする大きなウェーブを感じます。

ひとりひとりの悩みや行動はたとえ小さくても、それらが集まり同じ目標に向かって動き出しています。

www.shuto-mekkin.org

深柄先生が会長を務める研究会では、評価項目について滅菌技師/士の皆さまの意見を広く募集しています。上記サイトにQRコードが載っています。

直接メールされる方は、こちらのアドレスへどうぞ。

滅菌管理業務検討委員会メールアドレス:jsmimekkin@gmail.com

 アドレスをそのままコピペできる記述の方法は、下の記事をご覧ください。

SSL化(暗号化)していないURLのリンクを外した記述方法 - 中材業務【洗浄と滅菌】安全な再生処理と感染制御

<参考>

評価基準(案)の一部をご紹介します。もっと具体的な内容をリクエストできます。

  1. 再生処理を行う施設基準について
  2. 滅菌の質保証
  3. 組立包装
  4. 洗浄の品質保証
  5. 標準業務手順書
  6. インシデント/アクシデントのモニタリングの仕組み
  7. 教育システム
  8. 業務量の把握と適正人員(マネジメントを含む)
  9. コスト管理
  10. 他部署連携コミュニケーション

各項目の内容についても細かく意見を求めています。

「1.施設基準について」ゾーニング、業務量に応じたスペース・機器・人員配置、質の保証、搬送システムなど。

「10.他部署連携コミュニケーション」手術部と中材の連携、定期的なミーティングの開催、外来・病棟との連携、問題の把握と解決方法、病院全体の器材管理(流通数の確認・紛失防止策・保管状況のチェックなど)、経営者が中材の意義と重要性を理解し適切なサポートをしているか、など。

QMS省令で示されている経営者と現場責任者の責任と権限の明示や組織図、業務全体のフロー図、計画と実施記録の整備、作業環境管理、設備管理に加えて、医療器具のトレーサビリティなど、現場が抱えている疑問や悩みをどんどん出していきましょう。

「目的」(ゴール)を明確にし、全体像を理解することが重要です。各論はその上に成り立っていきます。

なんだかワクワクしませんか?

あなたの「ひとこと」が、日本の再生処理の未来を創るのです。